お子さんの背が伸びていくのは嬉しいものですが、「背骨が真っすぐに成長しない」、側弯症という病気をご存じですか?
脊柱を正面から見た時に、左右に曲がっている状態を脊柱側弯症と言います。11~18歳の思春期の成長期に発症する「思春期特発性側弯症」が最も一般的ですが、4~10歳の幼児期から小学校低学年の時期に発症して、肺の発達に障害がでたりする「小児特発性側弯症」もあります。いずれのタイプでも早期発見と早期治療が重要で、特に女児は男児に比べて5~8倍も発症率が高いので、女子では特に注意が必要です。
側弯症があると、外見的に背部や腰部の突出や肩の高さの左右差や肋骨の突出、円背、ウエストラインの左右非対称性、乳房の形の左右差などが生じるだけではなく、痛みや肩こり、自律神経失調症状や心理的ストレス、進行すると肺や心臓を囲んでいる胸郭の変形によって肺活量の減少や息切れを感じるようになります。
脊柱側弯症は成長期にいつでも発症するため、成長が継続している間はたとえ一度の検診で異常がなくても安心はできません。毎年行われる学校検診に頼るだけではなく、まずご家庭で子どもの背骨や手足について評価を行うことが重要です。気になる変化があれば整形外科の受診をお勧めします。
脊柱側弯症の早期発見のために、ご家庭で前屈検査と背面観察の2つを定期的に行うようにして下さい。これらの検査はお子様を上半身裸か、もしくはブラジャーだけにして観察することが必要なので、お母さまのご協力が不可欠です。まず最初に、「前屈検査」を行います。両方の手のひらを合わせて、両腕を自然に前に垂らし膝を伸ばしたまま、背中を丸めながらゆっくりとおじぎをさせます。
(日本側弯症学会より転載)
おじぎをするに従って、肩周辺、背中、腰部の順に左右の高さに差があるかどうかを、前と後ろから確認してください。ブラジャーをしている場合には、ブラジャーのバックベルトの部分と肩甲骨や背中の距離に左右差があるかどうかをよく観察してください。
(日本側弯症学会より転載)
続いて、真っ直ぐに立った状態に戻って、ウエストライン、肩の高さ、肩甲骨の高さと突出の程度について、左右差があるかを観察をしましょう。肋骨の突出度合いの左右差を前側から見て頂くことも有用です。
これらの検査で、左右差があれば側弯症の疑いがあります。側弯症が疑われた場合には、整形外科を受診してレントゲン検査で側弯の程度を評価します。傾きが一番大きい背骨で作れる角度をCobb角といい、10度以上の場合を側弯症と言います。Cobb角が25~45度程度ではコルセットによる装具治療を行います。それ以上の高度な側弯がある場合には、手術を行うことになります。
側弯が軽度で経過観察となった場合でも、整形外科医による定期的な観察が必要です。「経過観察」というと何もしないように思われるかもしれませんが、そうではありません。米国の研究では、Cobb角が 40度以上である と、16 歳でもその後進行する可能性が 70%もありますが、19度未満であった場合に側弯症が進行する確 率は、10~12 歳では25%、13~15 歳では10%、16 歳では0%であると報告されています。側弯が軽度の方の中には側弯症と気付かれない方ほとんど進行しない方、側弯症は進行するが特別な治療を必要とせず成⻑期を終えられ る方も多いので、治療をする必要があるかどうかを経時的に観察する「経過観察」も重要なことなのです。
一方、整体などでシュロス法などの運動療法が勧められることもありますが、世界中で科学的評価が行われているにもかかわらず運動療法の効果は明確になっていないことに注意が必要してください。
お嬢様の成長を見守るためにも、お母さまのご協力が必要不可欠です。是非、数ヵ月に1回ぐらいは、お嬢様の背中を見てあげてください。