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3月のテーマ ー 花粉症

今月のテーマは花粉症です。

毎年花粉症でイヤな思いをしている方は多いですよね。

日本で最も多い花粉症の原因はスギ花粉で、花粉症の原因の約7割を占めます。

地域差はありますが、スギの花粉は 2月頃から飛散し始めて、約2カ月間続きます。花粉は晴れた日に多く飛散し、1日の中では正午前後と日没直後に飛散量が多くなります。しかし、近年飛散量が増えているヒノキ科の花粉がスギ花粉より1カ月から1カ月半遅れて飛散するので、症状が長引く場合はヒノキ花粉症を併発している可能性があります。

北海道にスギは少ないので、スギ花粉症はほとんどありませんが、3月から6月にかけてシラカバやハンノキなどのカバノキ科の花粉が飛散し花粉症を引き起こします。近畿地方ではカバノキ科のヤシャブシが多く植林され、ヤシャブシ花粉症が問題になっています。花粉は1月から4月にかけて飛散します。

夏にも花粉症があります。イネ科の植物の花粉が原因です。花粉症の原因となるイネ科の植物の代表はカモガヤです。全国いたるところの道端、空き地、土手、河川敷など身近な場所に繁殖し、主に5月から10月に花粉を飛ばします。

また、ブタクサやヨモギなどの雑草の花粉もあります。ブタクサは空き地の減少や積極的な刈り取りにより少なくなっています。飛散時期は8月から10月。ヨモギによる花粉症もブタクサと同じくらいみられ、シーズンはブタクサより半月程度遅れます。

毎年の花粉飛散状況は下記のようなサイトに情報が掲載されるので、参考にすると便利です。

花粉飛散情報  https://tenki.jp/pollen/

東京都アレルギー情報ナビ https://www.hokeniryo1.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pollen/index.html

花粉症の4大症状は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみです。

くしゃみは発作のように連続して起こり、回数が多いのが特徴です。風邪の場合は長くても1週間程度で治まりますが、花粉症の場合は原因となる花粉の飛散している間続きます。鼻水は水のようにサラサラして、風邪のときのように粘り気がある黄色い鼻水にはなりません。鼻づまりや目のかゆみも強く出ます。

また、たんの出ない乾いたせきが続くことがあります。花粉の直接の影響、ということもありますが、鼻詰まりのために口呼吸になってしまって咳が出ることもあるのです。重症の場合は、気管支の粘膜が腫れて、のどの痛みや呼吸困難が起こることもあります。皮膚に花粉がつくことで肌が荒れたりかゆみが起きることもありますし、花粉症の症状が重いと、ぼーっとして熱っぽい、だるく倦怠感がある、頭が重いといった全身症状をともなう場合もあります。

花粉症の方は市販の医薬品(OTC医薬品)を使ったり、病院や診療所でお薬を処方してもらうことが多いと思います。

最近では薬局で買える市販の医薬品でも十分な効果を得られるものが多くなってきているので、それを使うのも良いでしょう。

お子さんなどの夜の鼻詰まりを解消するためには、ヴィックスヴェポラップのようなお薬を使うのも良いことがあります。

病院や診療所で花粉症の治療をする時に処方されるお薬は、

1) 点鼻ステロイド薬

2) 抗ヒスタミン薬

3) 抗アレルギー薬やステロイドの点眼薬

4) 点鼻血管収縮剤

のいずれかの組み合わせになります。

1)の点鼻ステロイド剤は有効性が高く、花粉症の症状、とくにくしゃみや鼻水に対する効果が強いのに眠気などの副作用がないことが特徴ですが、効果発現に半日~1日程度の時間がかかる、という欠点があります。このため、症状があってもなくても、花粉症の期間中は毎日欠かさず使用することが重要です。

医療機関で処方されるお薬としてはアラミスト、ナゾネックス、エリザスなどがあります。アラミスト、ナゾネックスは液体なので、「噴霧後の鼻だれが嫌だ」という方は粉剤のエリザスが良いでしょう。アラミストは点鼻薬なのに「目の症状も緩和する」という作用があるので、当院ではアラミストを使うことが多いです。

実は点鼻ステロイド薬は薬局でOTC医薬品として買うこともできます。フルナーゼ点鼻薬、パブロン鼻炎アタックJL、コンタック鼻炎スプレー「季節性アレルギー専用」というような製品です。1日2回使用しなくてはいけませんが、特にフルナーゼ点鼻薬は医療用にも使われている製品なので、有効性が高くてよいと思います。

2)の抗ヒスタミン薬は花粉症治療で最も使われるお薬で鼻水やくしゃみ、目のかゆみなどを改善してくれます。OTC医薬品としても各種出ていますが、眠気やだるさという副作用があるので要注意です。特に第一世代という古いタイプの抗ヒスタミン薬(クロルフェニラミン)が含まれているものはだるさ、眠さが強いので、運転や機械操作をする時には使わないようにしてください。

第二世代の抗ヒスタミン薬は眠気は軽くなっており、アレグラ(フェキソフェナジン)、エバステル(エバスチン)、クラリチン(ロラタジン)は眠気が少ないとされていますが、それ以外のものは眠気には注意してください。

3)の抗アレルギー薬の点眼薬は目のかゆみが強い人には必要なお薬です。コンタクトレンズを使用している時には使用できないものが多いのですが、アレジオンLXという点眼薬(処方薬)だけはコンタクトレンズ装着時でも使用できるので便利です。また、最近アレジオン眼瞼クリームという上下瞼に塗ることで効果を発揮する薬も処方できるようになったので、目薬が苦手な方には良いでしょう。

抗アレルギー薬の点眼薬で効果が出なかったり、角膜に傷がつく、などしてしまった場合にはフルメトロンなどのステロイド点眼薬を使うこともあります。ステロイド点眼薬は非常に有効な薬ではありますが、副作用も多いので、眼科医への受診が必要です

4)の血管収縮点鼻薬は鼻の中の血管を収縮させることで鼻水や鼻詰まりを改善する薬で即効性が強いのでOTCでも多く販売されています。しかし、頻回に使うと効果がなくなっていく、という欠点がありますし、点鼻時に痛みを感じることも多いので、処方薬としてはあまり使われなくなっています。

今年は例年になく花粉の飛散が早くから始まり、また、飛散量も多く長い期間飛散が続くと予想されています。

花粉症シーズンを快適に過ごせるように、ご自分に合った治療法を探して下さいね。

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