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健康食・美容食をお勧めしています

健康食・美容食をお勧めしています

「健康な食事」というと、「塩分を減らせばいい」と短絡的に言う人が多いのですが、事情はもう少し複雑です。

そもそも「減塩と血圧の関係」自体が、そんなに関係が強くないことをご存じですか?

食塩摂取量と血圧の関係の説明でよく使われるグラフがあるのですが、「食塩摂取量が低くて血圧が低い」グループは、もともと食塩摂取量の少ない「無食塩摂取」文化をもつ非常に特殊な「未開発社会」のデータです。これに対して食塩摂取量が多いグループはすべて文明社会で、こちらのグループだけを見ると食塩摂取量と血圧の関係はほとんどみられません。一方、平均寿命を比べてみると無塩~低塩の「未開発社会」グループの寿命は短く、高塩分摂取の文明社会グループの寿命の方が長くなっています。日本の塩分摂取量は年々減ってきているのですが、20歳以上の日本人が1日に摂取している食塩の量は、男性10.8g、女性9.2gです。これに対して、厚生労働省の「健康21」のデータでは、食塩摂取量の少ない順に、オーストラリア(6.2g)、アイルランド(7.4g)、フランス(7.5g)、イギリス(8.0g)となっており、これらの国々より日本は2~3g程度多く、トルコ(16.8g)に次いで、2番目に多くの塩分を摂取している国です。

さて、おかしいことに気が付きませんか?

2019年の平均寿命を見てみると、1位 日本、7位 オーストラリア、11位 フランス、18位 アイルランド、24位 イギリス、38位 トルコ…です。

実は、塩分摂取量と平均寿命の間の相関はないのです。日本で平均寿命が延び始めたのは1970年代ですが、この時代は日本の高度成長期に当たっていて、それまで塩蔵などでしか保存できなかったものが冷蔵庫などの家電製品の普及に伴って全国的に塩分摂取量が下がってきた時代です。逆に日本人のコレステロールの値を見てみると1970年代を境に激増しています。日本人の平均寿命は、塩分摂取量の低下に先立って延長しています。家電製品が普及してもすぐに高塩分食が衰退した訳ではないため、塩分摂取量が低下する前から、既に日本人の平均寿命は延長してきているのです。しかも、コレステロールの値は増えているのに…です。

確かに、高齢老人の高血圧の患者さんや、塩分感受性の高い人では、減塩をすると一定の降圧がみられるケースがあるのは確かなのですが、多くの人では、減塩をしたからといって血圧が目に見えて下がることはありません。平均して1gの減塩をしても低下する血圧は0.1~1mmHg程度です。血圧が160mmHgの人が減塩だけで降圧をしようとすると、塩分摂取量をほぼゼロにしたところで全く足りません。

「高血圧にならないように減塩をしましょう」というのは、正しいとは言えないのです。

それにもかかわらず、私たちのクリニックでは「減塩をしましょう」と言っています。なぜでしょう?

それは、塩分が「強すぎる味覚」だからです。生き物は長い間、自然界から十分な塩分を摂取することに苦労してきました。先ほども述べた無~低塩分の「未開文化社会」がその良い例です。例えばブラジルの山中にいたヤノマモ・インディアンは塩分を摂取する習慣がなく、食べ物の中に自然に入っている塩分だけで生活する「無塩文化」でした。このヤノマモ・インディアンには高血圧の患者がおらず、加齢による血圧上昇もありませんが、下痢や発熱による発汗、ケガなどによる体液喪失には極めて弱く抵抗力がありませんでした。「敵に塩を送る」という言葉があるように、とても長い間、生命にとって塩は生存のための貴重な資源だったのです。

このため、私たちの味覚は塩に対して貪欲です。塩分は他の味覚を容易に押しのけてしまいます。味は、甘味、苦味、酸味、塩味、うま味の基本5味から構成されていますが、子供は酸味、苦味を嫌います。動物にとって酸味は腐敗物の味、苦味は避けるべき味だからです。すぐにエネルギーになる糖分の甘味、タンパクの原料になる良質のアミノ酸のうま味はもちろんですが、それ以外の味は塩味しかないのです。ちなみに、辛味は痛覚で感じるので基本5味には入れません。辛味は刺激性の強い危険な食べ物の味だったので、子供は嫌います。だから、子供は塩味と甘味の強いものが大好きなのです。だって、それしかわかりませんから。だから、塩味の強い食べ物は魅力的なのです。

これが減塩食が長続きしない理由です。だって「ただ塩分を減らしただけの食事」なんて美味しくないですから。美味しくない食事を長く食べ続けることなんて、できる訳がありません。

マクドナルドがなぜ、競争が激しいアメリカのハンバーガー競争を生き延びたのだと思いますか?もちろんハンバーガー屋さんですから、みんなハンバーガーの味で勝負しました。ハンバーガーの味だけを取ればマクドナルドよりも美味しいハンバーガーはたくさんありましたし、今もたくさんあります。私もアメリカに住んでいる時には美味しいハンバーガーを探すのが好きでした。アメリカのハンバーガーは大きくて、手で持てないような大きさのものも多く、お皿の上でナイフとフォークを使って食べることも普通です。実は…マクドナルドの勝因はフライドポテトなのです。フライドポテトはステーキやハンバーガーの付け合わせで食べることが多いので、皿の上には肉汁がたくさん出ます。このため、肉汁を吸ったフライドポテトを食べることになり、フライドポテト自体には塩味があまりついておらず、柔らかいものが普通です。ところが、マクドナルドのハンバーガーは小さくて軽いので手で持って食べます。そのため、味のない柔らかいフライドポテトでは美味しくないので、カリッと揚げた塩味の強いフライドポテトにしたのです。これが塩味に惹かれる子供や若い人、肉体労働者などに大人気となり、マクドナルドの勝利の原因となりました。

子供は塩味、甘味、うま味しか魅力的な味を持たないため、塩味の濃いもの、甘味の濃いものを好みます。そして、より塩味、甘味の強いものへとエスカレートしていきます。大人になってもその延長線上で味を感じます。子供がどっさりうま味調味料を振りかけることがありますが、これも同じことです。単調な味だけに頼っているとより強い刺激を求めていきます。塩分が怖いのはこの点です。

私たちは美味しい自然の味を感じるために、減塩をお勧めしています。自然の材料の美味しい味を感じていただくことで、使う食材の幅が広がります。そしてそれは、食物繊維の多い野菜を食べることや、魚や肉をバランスよく食べることへとつながります。

基本5味の仕組みさえわかれば減塩はそんなに難しくありません。塩分の刺激を他の味(甘味、うま味、酸味)で置き換えてあげればよいのです。お出汁を少し濃く取ってあげるだけで、ほとんど塩分を加えなくても美味しくいただくことができます。あまじょっぱい味はみんな好きですよね。塩味の代わりに少し甘味と酸味、うま味を加えてあげることで美味しいドレッシングやソースを作ることができるのです。このようなソースやドレッシングを使った料理は、材料の味を楽しむこともできるので、いろいろな食材に応用が利きます。

私たちが健康食・美容食と言ってお勧めしているレシピの多くはこのような仕組みです。

私たちのクリニックではこのような考え方で作ったレシピで作った料理の試食会やレシピのご紹介もしています。材料は、普通に家にあるお酢や油、お醤油、砂糖、マヨネーズ、トマトケチャップなどです。特別な商品が必要なわけではありません。どなたでも今日から健康食・美容食をご自宅でおつくり頂けるようにご紹介しています。

ぜひ一度、私たちの試食会にご参加いただければと思います。

 

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