こんにちは!
こんな質問を頂きました。
「コロナワクチンの副反応として本当に血栓症はあるのでしょうか?」
確かに世界中のニュースで話題になっていますね!
でも実はこの血栓症という現象は、
「副反応ではなく有効性の差を見ているだけ」
かもしれません。
???何を言っているのかわからない???
そうなんです。
わかりにくいですよね。
だから世界中で混乱が起きてしまっているのだと思います。
薬は病気の人に使いますが、ワクチンは健康な人に使いますし、
使う人数が薬とワクチンでは桁違いなので
ワクチンの安全性の評価の考え方と薬の安全性の評価の考え方とは全く違います。
これについてはまた別の機会にまとめることにしましょう。
さて、今日のお題の血栓症ですが、
ファイザー製やモデルナ製のワクチンでは少ないみたいだが、
アストラゼネカ製やJ&J製のワクチンでは多いみたい
というのが報道されている情報になります。
さてこの違いとして、
ファイザー製、モデルナ製はmRNA型ワクチン
アストラゼネカ製、J&J製はアデノウイルスベクター型ワクチン
だから、と説明されていることが多いようです。
mRNA型ワクチンは、
コロナウイルスのSタンパクをコードするRNAを注入する
ので、細胞に直接タンパク質の設計情報となるmRNAが注入されます。
このため、遺伝子発現が確実であることが95%という高い有効率につながっていると考えられます。
これに対してアデノウイルスベクター型ワクチンは、
アデノウイルスの中にSタンパクをコードするDNAを入れたものを注入する
ものです。アデノウイルスは子どもの風邪でよくみられるウイルスですが、
ベクター(遺伝子の運び屋)として使用する場合には、
ヒトの体の中では増えることができないように特定の遺伝子を欠損させたものを使います。
ですが、アデノウイルスは風邪のウイルスなので、
多くの人は人生の中で自然にかかっているので自然に一定の抗体を持っている人がいます。
このため、アデノウイルスベクターを注射した時に
自然に持っている抗体によってアデノウイルスが排除されてしまう
ためにワクチンが効かない人が一定数存在します。
これがmRNAワクチンに対して有効率が劣る理由の一つと考えられます。
しかし、重症化予防の効果は100%と報告されており、取扱いの簡便性もあり非常に優れたワクチンであると考えられます。
さて、
コロナウイルス感染症自体が血栓症のリスクを大きく増加させる
ことはよく知られていて、イギリスの報告ではなんと、正常の
32倍!
というとんでもない数字が報告されています。
mRNA型のワクチンの場合、感染予防効果が確実であるために、
ワクチンを使用した方のうち発症する人は5%ぐらいと仮定します。
これに対し、アデノウイルスベクターワクチンではアデノウイルスの排除を受けるため
有効性が若干劣り30%の人がコロナに感染すると仮定します。
コロナウイルスによる血栓症発症が 32ppm、
ワクチンによる血栓症発症が両方とも 0ppm として、
コロナウイルスへの感染率を30%と高い数字に置いたとき、
♠ mRNA型注射後感染した人:0.05 × 0.3 × 32 =0.48 ppm
♠ アデノウイルス型注射後感染した人:0.3 × 0.3 × 32 = 2.88 ppm
と大きな差がみられます。
しかし、これはワクチンの副反応ではなく、
有効性の差を透かしてコロナウイルス感染症の症状を見ているだけ
です。
報告されている血栓症の多くは血小板減少を伴っており、
ヘパリン起因性血小板減少症
の特徴を示していることがわかってきていますが、
これがコロナウイルス感染症によっておこる血栓症に共通の現象であれば
ワクチンによる血栓形成ではない
ということができるかと思います。
アデノウイルスベクター型のワクチンは
♦ 温度管理が容易
♦ 現地生産ができる
♦ 生産調整が容易
とmRNA型と異なる特徴を持っているので、
在宅医療や老人医療施設、老人ホーム、地方や離島などでは非常に有用
なのです。
ワクチンと医薬品の有効性・安全性の評価の違いを知らないと正しい評価ができないのです。