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花粉症の治療

花粉症の治療

この時期、花粉症でお悩みの方も多いと思います。

暖かい日は花粉がかなり多く飛散するので、まだまだ要注意です。

特に 

  寒かったのに急に暖かくなった日

  雨が上がって晴れた日

  風の強い日

は要注意です。

 

当院院長はアレルギー関係のお薬もいろいろと開発してきたので、花粉症の治療も当院の得意分野の1つです。

眠くなったら困る受験生や学生さん、ドライバーの方、目のかゆみが強い方、くしゃみが止まらない方など、患者様の症状や生活スタイルに合わせてお薬を調整させて頂いています。

 

とはいうものの、当院での治療の中心になっているのは「アラミスト」というステロイドの点鼻薬です。

ステロイドの点鼻薬には、リンデロン点鼻薬、フルナーゼ点鼻薬、ナゾネックス点鼻薬、アラミスト点鼻薬、エリザス点鼻薬があります。

リンデロン点鼻薬は古いタイプのお薬なので当院では使うことはほとんどありません。

これ以外のステロイドの点鼻薬は体に吸収されずに鼻の部分だけに効きますから、全身性の副作用も少なくて安心です。

フルナーゼ点鼻薬は1日2回の噴霧が必要なので、今はあまり使いません。最近薬局でセルフメディケーション用のOTC(市販医薬品)として販売されていますので、受診が間に合わないときや出張先で急ぎで手に入れたいときなどには良い薬です。

ナゾネックス点鼻薬、アラミスト点鼻薬、エリザス点鼻薬はいずれも1日1回のお薬です。

薬の性状としては、ナゾネックスとアラミストは液体、エリザスは粉末という違いがあります。

ナゾネックスとアラミストは12歳未満の子供にも使うことができますが、エリザスは小児の安全性試験が行われていないため、子供に使うことはできません。実はエリザスは副腎抑制効果の強いステロイドなので、成分的に小児に使うことは適していません。このため、小児の安全性試験を実施していないので、小児に使ってはいけません。

点鼻用のデバイスもそれぞれ特徴があり一長一短ありますが、当院でアラミストを1番使用している理由は、「アラミストが目の症状にも効くから」です。

アラミストはどういう理由だかはいまだにわかりませんが、点鼻で使うと目の症状も改善してしまう、という効果があります。

これは日本で開発をする前、開発のために海外データを評価しているときに気が付いたことなのですが、日本で臨床開発を実施した中でも、目の症状に効くことはわかっています。

もちろん点鼻薬なので、目の症状が完全によくなるわけではありませんから、目の症状が強い方には点眼薬も併用いたします。

アラミストは2023年に各社から「フランカルボン酸フルチカゾン」の名称でジェネリックが発売されていますが、アラミスト点鼻薬の横プッシュ方式の独特な形状の容器については特許が残っているため、ジェネリック各社は真似をすることができません。唯一「武田テバ」という会社が発売しているフランカルボン酸フルチカゾン(アラミストのジェネリック)は、AG(オーサライズドジェネリック)といって、オリジナルのアラミストと同じ工場で作ったものをジェネリックとして販売しているので、同じ容器が使われています。「アラミストの容器が使いやすいんだよね!」という方は「武田テバ」のアラミストをお使いになると良いと思います。

症状の軽い花粉症の方だとアラミストだけでシーズンを乗り切ることも可能です。また花粉症の飲み薬は多かれ少なかれ眠気が出ますので、受験生やドライバーの方など、眠気をどうしても避けたい方にはアラミスト中心の処方をさせて頂いています。

「アラミストが効かない」とおっしゃる方の多くは、「症状がある時だけ使っている」ことが多いのでご注意ください。アラミストのような点鼻ステロイドは即効性がなく、毎日薬を使うことで効果が安定して発揮されます。症状があってもなくても花粉シーズン中は毎日きちんと使うことがしっかり効かせるコツになります。

点鼻薬には「血管収縮薬」という、血管を収縮させて鼻水を抑えるタイプの薬があるのですが、この血管収縮薬はすぐに効く即効性が高い薬剤ですが、作用時間が短く、また、何回も使っていると効果が弱くなっていく、という特徴があります。

アラミストのような点鼻ステロイドを、血管収縮剤のように「鼻水がひどい日だけ使う」という使い方をしていると全く効果が得られません。逆に「血管収縮剤」を症状もないのに毎日使うのは効果を弱めて副作用が強く出るのでおやめください。

花粉症の飲み薬は眠気と効き目でグラフにすると、下記のようになります。

2010年にザイザル(レボセチリジン)が発売されてからは「眠気が少なくて効果が強い薬」としてザイザルが多く使われてきましたが、実はザイザルはジルテックと同程度に眠くなるので注意が必要です。ザイザルは当院院長が開発責任者として開発した薬剤なのですが、「効果も安全性もジルテックと同等」というのが本当のデータですからご注意ください。

ザイザルの知られざる特徴は、「割線が入っていて半錠に割れること」と、「効果がない場合には2錠まで飲めること」、そして「シロップ製剤があること」です。

割線が入っている薬はいろいろあるのですが、患者さんが自分で器具を使わずに割るときれいに半分に割れない薬も多くあります。ザイザルは0.5錠や1.5錠など、症状に合わせて調整することができるように、患者さんが自分で器具を使わなくても、できるだけきれいに半分に割れるように製剤設計してあります。

ザイザルも「レボセチリジン」の名称で各社からジェネリックが発売されていますが、ジェネリック製剤が割線できれいに割れるように製剤設計しているかどうかはわかりません。こちらも「武田テバ」のレボセチリジン(ザイザルのジェネリック)は、ザイザルの製造工場と同じ工場で同じように製造しているAG(オーサライズドジェネリック)なので、製剤品質はオリジナルのザイザルと全く一緒ですから、半分にきれいに割ることができます。

また、ザイザルシロップは6カ月以上の小児に使うことができる製剤です。シロップ製剤というと、小児用のお薬、と思っている方が多いのですが、成人の方も使うことができます。成人の1回服用量は10mlで、効果不十分の場合には20mlまで増量できるのですが、液体なので、半分や1/3など眠気の出ない少量を使うこともできますし、標準の10mlで効果がない場合には一足飛びに20mlではなく、15mlとか、症状に合わせて調節できるのが大きな特徴です。

さて、抗ヒスタミン薬の中で、本当に眠気が少ないのはアレグラ、デザレックス、ビラノアです。

アレグラは眠気も少ないのですが、効果が弱い薬です。効果が弱くて効果の面では他の薬にに負けてしまう薬を「眠気が少ない」と言って売ったものなので、しっかり効かせたい時には効果の弱さが気になります。

デザレックスはクラリチンの活性代謝物なので、効果発現が早いという特徴がありますが、眠気、効果ともにクラリチンより少し良いぐらいの位置づけですから、眠くなることも多いですね。

今のところ、「眠気が少なくて効果が強い」抗アレルギー薬の1番手はビラノアです。1日1回で済むのも利点ですね。ただ、食後すぐに飲むと効果が悪くなるので、食後数時間経って寝る前に飲む必要があることと、1日1回1錠の用量設定なので、症状に合わせて服薬量を調整することはできません。

経口抗ヒスタミン薬の最大の特徴は「飲めばすぐ効く」ことです。点鼻ステロイドのように毎日しっかり使い込まずに「症状がひどい時にだけ飲む」という使い方でもかなりの効果を得ることができます。

当院ではこれらを組み合わせて、

  点鼻ステロイドを毎日使うことで、花粉症の症状レベルを低下させる

  症状がひどい日やピークの時期には経口抗ヒスタミン薬を組み合わせてしのぐ

というような使い方をお勧めしています。

点鼻のアラミストと組み合わせた場合にはビラノアほどの効果が必要ないことも多いですし、花粉飛散量が多くて症状がひどい日に緊急避難的にビラノアやデザレックスやザイザルを使うことで、眠気を避けることもできます。

また、当院では舌下免疫療法も行っています。舌下免疫療法は、毎日アレルギーの原因になる「アレルゲン(抗原)」を舌下に投与して体をだんだん慣らしていく治療です。

舌下免疫療法は治療期間が3年ほどかかるのが欠点といわれていますが、症状改善効果の発現自体は思いのほか早く、スギ花粉のシーズンの数か月前、10月、11月頃から治療を始めても花粉症の症状がほとんど出なくなる方もいらっしゃいます。治療期間3年というのは効果が出るまでの期間ではなく、治療をやめても効果が持続するようになるまでの期間なので、効果自体は割と早く実感することができます。

舌下免疫療法の欠点は「スギ花粉の飛散シーズンには治療を開始できない」ことです。すでに治療を開始している方は飛散シーズンでも治療を継続してよいのですが、新たに治療を開始する方はスギ花粉の飛散期間中は治療を開始できません。

ただ、効果が出てしまえば抗アレルギー薬などを使用する必要が少なくなったり、使う必要がなくなったりしますので、治療にチャレンジしてみる価値はあると思います。

特に、受験生やドライバーの方は眠くなる可能性のあるお薬を使わなくてもよくなるのは大きなメリットです。

また、妊娠・授乳中は抗アレルギー薬は使えないことが多いので、「今すぐに」ではなくても将来妊娠をご希望の女性は舌下免疫療法の実施を考えるのも良いと思います。

ただ、スギ花粉症の治療用薬であるシダキュアには供給の問題があるので、ご希望通りに開始できないことが多くてご迷惑をおかけしています。シダキュアは最初の1週間は2000単位、その後は5000単位に増量して治療するのですが、2000単位の製剤が十分に供給できない状況になっています。

シダキュアはスギ花粉を使って製造するのですが、スギ花粉の採取できる時期が限られていること、スギ花粉の採取には特殊な技術が必要なこと、それに加えて、スギ花粉採取から最終製剤の製造まで数年の時間がかかることから、メーカーもすぐには増産できないのです。治療期間が長い薬剤なので、メーカーは維持量である5000単位製剤の安定供給を第一に考えていますから、すでにシダキュアでの治療を開始している方が心配することはありません。ただ、開始用量の2000単位製剤の供給が増えてくるまでには数年かかるので、その間は舌下免疫療法を新規に開始したい方はなるべく早くご相談いただければと思います。2000単位製剤が入手出来次第ご連絡させて頂きます。

当院では、いろいろな方法を組み合わせて、一人一人の生活に合わせた治療をお勧めしておりますので、是非ご相談下さい。

 

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