コロナ感染症の変化の方向は
4月16日のブログ
に書いたとおりになってきています。
ウイルスは
ウイルス遺伝子と、それを包むタンパク質の殻
からできています。
細胞に感染すると遺伝子をコピーし、殻のタンパク質を合成させてウイルスの複製を行うのですが、
遺伝子のコピーは100%正確な訳ではなく、時々エラーが起きます。
ご存じの通り遺伝子はRNAとかDNAとかの物質で、
4種類の塩基の組み合わせで遺伝情報を保存しています。
「塩基3個で1つのアミノ酸」を表現しているのに加えて
同一のアミノ酸を示す複数の塩基の組み合わせがあるので、
少々コピーエラーがあっても出来上がりのタンパク質には大きな差異がでない
ようになっています。
…とはいうものの、ウイルスのように短時間で大量のコピーを繰り返す場合には、
エラーの累積が結構な割合になるので、表現されるアミノ酸が変化してしまうことがあります。
これが変異です。
アミノ酸が1個2個違っても大勢に影響がないような変化も多いのですが、
タンパク質の立体構造が大きく変化するような変化が現れると問題です。
人間の体の免疫細胞が作る抗体は、特定のタンパク質の特定の立体構造を認識しているので、
抗体が
「こいつがウイルスだ!」
と目印にしているタンパク質の立体構造が変化してしまうと、
抗体が結合することができずに見逃してしまいます。
このような「エスケープ変異」があると
ワクチンが効きにくくなったり1度かかった人でも再び感染したりすることがあります。
この他にもヒトの体に結合しやすくなる変異や
ヒトの体の中で増殖しやすくなる変異などがあって、
1つの変異株の中に複数の遺伝子の変化があることが普通です。
例えば、今話題になっているインド変異株(B.1.617)には
アミノ酸が変化をしている場所が13あります。
このうち、抗体が認識するスパイク蛋白の変異は2か所で、
E484QとL452Rです。
「E484Q」は、
スパイク蛋白の484番目のアミノ酸がE(グルタミン酸)からQ(グルタミン)に変わった
「L452R」は、
スパイク蛋白の452番目のアミノ酸がL(ロイシン)からR(アルギニン)に変わった
ことを意味しています。
メディアでは「二重変異株」と言われているのはこれが理由ですが、
変化が起きているのは2か所だけではなく、全体では13のアミノ酸の変化が起きている
ことに注意してくださいね。