こんにちは。
「コロナワクチンの3回目接種は必要でしょうか?」
というご質問を頂きました。
テレビなどで報道されているように、ファイザーやモデルナのmRNAタイプのワクチンの抗体価はどうも3か月~6か月の間ぐらいで下がってくるようです。確かに、抗体価のデータの報告などを見ると低下しているのは確かなようです。
一般的にワクチン接種後14~30日で抗体が形成され、その後2回目接種でブーストされて抗体価は急激に上昇し、その後徐々に下がってきます。
3~6か月の抗体価はブースト直後の抗体価の半分ぐらいになっていることも珍しくはありませんから、ネットなどで報告されている抗体価の低下はこのレベルの範囲にあります。抗体価が下がったから感染防御できない、ということではなく、一般的に、ウイルスに接触しなければ抗体価は下がっていきます。
ワクチン接種をすると、ヒトの体では抗体を作るだけではなく、抗体を作ること自体を覚えます。抗体を作るのは液性免疫というシステムですが、アジュバントなどを加えて細胞性免疫システムが刺激されると、「ウイルスに感染した細胞を壊す」免疫細胞などが覚えてくれます。
ワクチンの効果は「抗体価を上げること」だけではなく、体に「ウイルスに対する抗体を作ることやウイルスに感染した細胞を壊す細胞を作ることを覚えさせること」がその本質です。
体が一度コロナウイルスに対する攻撃を覚えてしまえば、次にコロナウイルスに感染した時には、たとえその時点で抗体価が下がっていたとしても、ヒトの体は「コロナウイルスが来たから、攻撃するぞ」と思いだして抗体を作ってくれます。
逆に、コロナウイルスに全く接触しなければ、コロナウイルスに対する抗体を作る必要はありませんし、無駄な抗体を作るエネルギーを使う必要もありませんので、抗体価は自然に下がってきます。場合によっては測定限界以下にさがることもありますが、体が「抗体を作ること」を覚えてさえいれば問題ありません。
マスメディアで「3~6か月で抗体価が下がってしまう」と言っているのは事実なのかもしれません。
しかし、抗体価が下がったからといって感染しやすくなる、ということではありません。
繰り返しますが、抗体価が下がっていたとしても、コロナウイルスがやってくれば体はちゃんと思い出します。
現行のワクチンでは2回の接種で十分にブーストされているので、3回目の接種は必要ないはずです。
一方、細胞性免疫の誘導にはアジュバントなどの免疫増強剤が必要なこと多いのですが、mRNAワクチンはmRNAの立体構造自体がアジュバント的効果を持っていると考えられます。また、アストラゼネカのアデノウイルスベクターワクチンはベクターに使用しているアデノウイルスが細胞性免疫を誘導する効果があると考えられるので、いずれも細胞性免疫の誘導効果があると考えられます。
よく「ワクチンを打ったのにコロナウイルスに感染した」という話がありますが、呼吸器系のウイルス感染症に対するワクチンは感染を完全に防御することはできませんし、頻度は減りますが、ワクチンを打った人であっても他人にうつす媒介者(ベクター)になりえます。しかし、ワクチンを打つことで液性免疫や細胞性免疫が確立すれば、重症化するリスクは格段に減ります。ワクチン接種が進んだ高齢者で重症者が激減したのがなによりの証拠です。このことについては、明日詳しく説明します。
結論から言うと、現在使用されているファイザー、モデルナのmRNAワクチンであっても、アストラゼネカのアデノウイルスベクターワクチンであっても、2回の接種で十分な抗体産生能力と細胞性免疫記憶が誘導される可能性が高いと考えられるので、現時点では3回目の接種は必要ない、と考えるのが妥当です。