HOME > 産業医コラム(リソー) > 5月の健康トピック ー 血圧の話

5月の健康トピック ー 血圧の話

血圧が高いとか低いとか言いますが、血圧の単位について考えてみたことはありますか?

血圧はmmHg(「ミリメートルエイチジー」と読みます)という単位を使います。

mmは長さ、Hgは水銀を意味しているので、120 mmHgの血圧は

「1気圧環境下で、水銀を120 mm押し上げる血圧」

という意味です。

血液の比重はほぼ1ですが、水銀の比重は約13.5ですから、

120 mmHgというのは、水に置き換えると

120 mmHg = 12 cmHg = 12 x 13.5 cmH2O = 162 cmH2O

つまり「水を162 cm垂直に噴き上げる」圧力ということになります。

高血圧で180 mmHgともなれば、180 mm x 13.5 = 243 cmH2O となり、なんと2m43cmも水を噴き上げる力となります。

血圧は140/90とか、2つの数字が書いてあります。

大きい方の数字を「収縮期血圧」、小さいほうの数字を「拡張期血圧」と言います。

心臓は「収縮→拡張」を繰り返して拍動して血液を送り出すポンプなので、心臓が収縮して血液を押し出すときの力が収縮期血圧です。

心臓が血液を押し出した後は「心臓の中に血液を取り込む時間」となり逆流防止のために大動脈弁が閉じてしまうので心臓からの圧力はゼロになります。

しかし、収縮期に押し出された血液が押し広げた血管が縮んで元に戻る力が働きます。これが拡張期血圧です。

血圧は

心臓が押し出す血液の量 × 血管抵抗

で規定されるます。血圧はこの2つの要素が合わさると、

収縮期高血圧 : 上の値が高い

となるのですが、高血圧の初期などでは

下の値だけが高い=拡張期高血圧 = 血管抵抗が増大している

事が多いのです。

塩分は体液量を増やす働きがあるので、塩分の取りすぎはむくみを引き起こし、心拍出量を増やすので血圧が上がります。

減塩で血圧は5~6mmHgぐらい低下します。減塩には体液量を減らして心臓の負担を取るだけではなく、血管のむくみをとって血管抵抗を下げる働きもあります。

また、動脈硬化や塩分の取りすぎで細い血管がむくむなどして細い血管の血流が悪くなると拡張期の血圧が上がります。

血管は自律神経の影響をうけますから、緊張が長く続いてリラックスできなかったり、疲れていたりすると末梢血管が収縮するので拡張期血圧が上がります。

多くの方の高血圧はこの「拡張期高血圧」が始まりです。

末梢血管の抵抗増加を放置しておくと、それに対抗して血液を送るために心臓からの圧力を増やさなくてはいけなくなるので収縮期高血圧になります。

収縮期高血圧が続くと大きな血管の動脈硬化が生じて血管の弾力性が失われるので、かえって拡張期の血圧は下がっていきます。

拡張期高血圧(下だけが高い)→ 収縮期+拡張期高血圧(上も下も高い)→ 収縮期高血圧(上だけが高い)

というように高血圧は悪化していきます。

血圧の健康を保つためには、まだ拡張期高血圧ぐらいのうちに正しく血圧を下げておくことが大切です。

 

よく、「血圧の薬を飲み始めるとやめられない」と言う方がいらっしゃいますが、そんなことはないのです。

ただ、血圧の薬は「ただ血圧を下げているだけ」なので、「血圧が上がっている原因を何か改善」しないと、薬をやめることができないだけです。

拡張期の血圧が高くなってしまった方は、薬で血圧を下げながら、

1 肥満を改善する

2 塩分の取りすぎを改善する

3 運動をする

4 飲酒を控える

5 禁煙

といった生活習慣の改善をするようにしましょう。

生活習慣の改善ができれば、お薬を飲まなくてもよくなることも多いですよ。

 

<今月のレシピ>

減塩は難しいなぁ、と思っている方。

塩で味付けをするのではなく、「だしでしっかり味つけをする」ようにするのもよい方法です。

人間が感じることができる基本の味は「甘味、塩味、酸味、苦味、うま味」の5味だけです。

塩味を減らすためには他の味を強くすれば良いので、うま味を強くすることで減塩につながります。

料理によっては塩の代わりに酢を加えて、酸味を楽しむのも良いでしょう。

うま味はだしからとりますが、顆粒だしは塩分が少し多いので、ひと手間かけてだしパックを利用するのがおすすめです。

だしパックの成分表示を確認して、原材料名に「食塩、粉末しょうゆ、砂糖、酵母エキスなどが入っていないもの」を選ぶと良いですね。

だし汁の濃度は、だしを抽出する水が軟水寄りか、硬水寄りかによっても異なります。

一般的に関西はやや軟水寄り、関東はやや硬水寄りといわれており、

「軟水のほうが昆布のうま味を抽出しやすいので、関西では昆布だしが発達した」

という説もあるようです。

100ml当たりの塩分量を比べてみると、昆布だしは0.2g程度、に対して、かつおだしは0.1gと昆布だしの方が塩分含有量が多いので、かつおだしを濃いめに作って、昆布だしと合わせた合わせだしを作ると良いでしょう。

あごだしを使うのもおすすめです。

「だし汁8:みりん1:醤油1」を合わせて作る八方だしを作っておくと便利です。

八方だしは、みりんと醤油をひと煮立ちさせたところに、だし汁を加えて沸騰寸前で火を止めるだけです。

色を付けたい料理には、濃口しょうゆを使った「濃口八方」

具材の色を引き立たせたい料理には、薄口しょうゆを使った「淡口八方」や白しょうゆをつかった「白八方」

魚など臭みを取りたい料理には、日本酒を加えて「だし:日本酒:みりん:しょうゆ=4:4:1:1」にした「酒八方」

などの使い分けもできます。

お気に入りのだしメーカーを探すのも楽しいですよ!

 

診療予約