コロナの制限もあけてきたので飲酒の機会も増えてきたと思います。今月はアルコールについての基礎知識を勉強しましょう。
さて、「お酒の1単位」ってご存じでしょうか?
アルコール摂取量の基準とされるお酒の1単位とは、純アルコールに換算して20gです。
この1単位を各種アルコール飲料に換算すると、ビールは中びん1本(500ml)、日本酒は1合(180ml)、ウイスキーはダブル1杯(60ml)、焼酎0.6合(110ml)が目安となります。
アルコール量は
お酒の量(ml)× [アルコール度数(%)÷ 100 ] × 0.8
で計算しますから、500mlのビール中びん1本を飲んだとすると
500(ml) × [5(%) ÷ 100] × 0.8 = 20(g)
となるので、アルコール量20g=1単位、ということになります。
ビール | (アルコール度数5度)なら | 中びん1本 | 500ml |
---|---|---|---|
日本酒 | (アルコール度数15度)なら | 1合 | 180ml |
焼酎 | (アルコール度数25度)なら | 0.6合 | 約110ml |
ウイスキー | (アルコール度数43度)なら | ダブル1杯 | 60ml |
ワイン | (アルコール度数14度)なら | 1/4本 | 約180ml |
缶チューハイ | (アルコール度数5度)なら | ロング缶 1缶 | 500ml |
アルコールを飲むと胃から約20%、小腸から約80%が吸収されて血液に入り、全身にいきわたります。
摂取されたアルコールの2~10%は、そのままのかたちで呼気、尿、汗として排泄されます。
体内に残ったアルコールの大部分は肝臓で代謝されて、
アルコール → アセトアルデヒド → アセテート(酢酸)
に分解されます。
アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)により身体に無害なアセテート(酢酸)に分解され、その後、TCA回路を経て筋肉・脂肪組織などで水と二酸化炭素に分解され体外に排出されます。
一部は非アルコール脱水素酵素系であるミクロソーム-エタノール酸化系(MEOS)により代謝され、アルデヒドになります。
MEOS系の代謝にはビタミンB1、アセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の代謝にはビタミンB3が関与します。
そのためアルコール代謝にはビタミンB1・B3が多く必要となります。このようにアルコール代謝にはビタミンB1が利用されるため、アルコールを恒常的に接種する方はビタミンB1をサプリメントなどで補充しておいた方がよいですね。
体重60kgの人が1単位のお酒を30分以内に飲んだ場合、アルコールは3~4時間体内にとどまります。2単位飲んだ場合には体内にとどまる時間は6~7時間に伸びてしまいます。これには個人差があるため、体質的にお酒に弱い人や女性の場合にはもっと長い時間がかかります。
また、深夜まで飲んでいると翌朝起床後まで体内にアルコールが残っているため、二日酔いとなってしまいます。
さて、次のURLでは飲酒量とアルコール血中濃度、分解時間の目安を計算する飲酒シミュレーションができます。
http://www5d.biglobe.ne.jp/Jusl/SmartJitutomo/widmark.html
体格や体質、体調により少ない飲酒量でも実際のアルコール血中濃度は高い場合がありますので、ご注意下さいね。
アルコールの作用は「中枢神経系統に対する麻痺」です。アルコールを接種すると、最初は抑制機能がマヒするので興奮現象が前面出て活発になります。しかし、ある程度の濃度を越えると神経の働きは全体的にマヒしてくるので、鎮静効果が強くなって小脳の機能が低下し、呂律が回らない・まっすぐ歩けないといった運動機能の障害がみられるようになり、さらに濃度が高まると大脳機能を含む中枢神経の機能がマヒして意識障害を起こして死亡します。
血中アルコール濃度 | 酩酊症状 |
---|---|
20-50mg/dl | 気分さわやか、活発な態度 |
50-150mg/dl | 気が大きくなる、馴れ馴れしい、集中力の低下、心拍数・呼吸数の増加 |
150-250mg/dl | 構音障害、失調性歩行、複視、悪心・嘔吐、傾眠傾向、突拍子もない行動、反社会的行為 |
250-400mg/dl | 歩行困難、言語滅裂、明らかな意識障害、粗い呼吸 |
400-500mg/dl | 昏睡状態、尿失禁、呼吸停止、死亡 |
アルコール血中濃度と酔いの状態
血中濃度(%) | 酒量 | 酔いの状態 | 脳への影響 | ||
---|---|---|---|---|---|
爽快期 | 0.02~0.04 | ビール中びん(~1本) 日本酒(~1合) ウイスキー・シングル(~2杯) |
| 軽い酩酊 | 網様体が麻痺すると、理性をつかさどる大脳皮質の活動が低下し、抑えられていた大脳辺縁系(本能や感情をつかさどる)の活動が活発になる。 |
ほろ酔い期 | 0.05~0.10 | ビール中びん(1~2本) 日本酒(1~2合) ウイスキー・シングル(3杯) |
| ||
酩酊初期 | 0.11~0.15 | ビール中びん(3本) 日本酒(3合) ウイスキー・ダブル(3杯) |
| ||
酩酊期 | 0.16~0.30 | ビール中びん(4~6本) 日本酒(4~6合) ウイスキー・ダブル(5杯) |
| 強い酩酊 | 小脳まで麻痺が広がると、運動失調(千鳥足)状態になる。 |
泥酔期 | 0.31~0.40 | ビール中びん(7~10本) 日本酒(7合~1升) ウイスキー・ボトル(1本) |
| 麻痺 | 海馬(記憶の中枢)が麻痺すると、今やっていること、起きていることを記憶できない(ブラックアウト)状態になる。 |
昏睡期 | 0.41~0.50 | ビール中びん(10本超) 日本酒(1升超) ウイスキー・ボトル(1本超) |
| 死 | 麻痺が脳全体に広がると、呼吸中枢(延髄)も危ない状態となり、死にいたる。 |
さて、お酒の飲み方にもいろいろありますが、寝酒をする方も多いと思います。
お酒を飲んで寝ると、すぐに深い睡眠(ノンレム睡眠)が現れるので、ぐっすり眠った気になるのですが、実は寝酒は睡眠の質を低下させ、疲れを取りづらくします。
寝酒をして寝た後にアルコール血中濃度が低下すると、反対に覚醒作用が働いてしまうので、以降は深い睡眠が減り、浅い睡眠(レム睡眠)の時間が長くなり、酒を飲まないときと比べて睡眠時間も短くなる傾向があり、脳は十分に休まりません。
また寝酒を続けていると耐性がつき、少量のアルコールでは眠れなくなってしまい量が増えていきます。お酒に強い人ほど、大量飲酒になる可能性もあり、アルコール依存症のリスクを高めることにもなります。
アルコールは 結果的に睡眠を攪乱し良質の睡眠を妨げるため、睡眠剤としては全く適していません。また寝酒はアルコール多飲のきっかけにもなるので、寝酒をして寝る習慣はやめた方が良いでしょう。