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オミクロン株の本当の怖さ

オミクロン株の本当の怖さ

コロナウイルスの新しい型、オミクロン株についての報道が盛んです。

メディアは、

オミクロン株はスパイクたんぱく質が変化していて免疫を回避する、とか、

ワクチンの効果が弱くなるので再感染する、とか、

ウイルスの毒性が強くなっているかもしれない、とか、

いろいろと言っていますが…まあ、どれも間違いです。

 

ワクチンなどで得た免疫は、スパイクたんぱく質の「どこか」に反応します。

ウイルスに変異が起きたからと言って、反応する部位が全く変わってしまう、というようなことはありません。

ワクチン効果が減弱するかどうかもわかりませんが、今の変異部位を見ている限り、全く効果がなくなるようなことはありません。

それに、ワクチン効果だけで社会的な感染抑制が成立している訳では無いことは、世界中を見ればわかります。

ワクチン接種率の高いイスラエル、英国、韓国などでもオミクロン株感染が拡大していますが、同じようにワクチン接種率の高い日本では感染拡大が起きていません。

日本で感染拡大が起きない理由は別のコラムで説明します。

海外の状況をみていると感染者数が多くても重症患者数は増加していないので、オミクロン株の毒性が「強くはない」ことは確実なようです。

まとめると、オミクロン株は「デルタ株よりも感染はしやすいけれど、既存のワクチンや感染防御策が有効で、毒性はそんなに強くない」株ということになります。

もっとはっきり言うと、オミクロン株の感染自体は、そんなに心配しなくてもいいだろうと思います。

 

オミクロン株の本当の怖さは全く別のところにあるのです。

新型コロナウイルスのアルファ株、ベータ株…という名前は、見つかった順番につけられており、ウイルスの系統を示しているものではありません。

これはどういうことか、というと、「アルファ株が変化してベータ株になって、ベータ株が変化してガンマ株になって…というわけでは無い」ということです。

変異は連続していることも、連続していないこともあるのです。

実は、オミクロン株の系統分析結果を見ると、今までの株とは比較的早い段階で別れた株ですので、デルタ株が変化してオミクロン株になったのではありません。

新型コロナウイルスはコウモリだか、イタチだかはわかりませんが、もともと野生動物にいたウイルスです。

これがヒトに感染するようになって、徐々にヒトに感染しやすくなるように変異を繰り返してきました。

このため、以前に比べて、潜伏期間が短くなり、感染しやすくなるように変化してきました。ここまでは連続的な変化です。

しかし、オミクロン株のように全く別系統の株が出てくる、ということは、ヒト以外の動物界にすでに存在するコロナウイルスからもヒトに感染するものが出てくる、ということを意味します。

 

良い例がインフルエンザです。

インフルエンザは鳥と豚とヒトに感染します。ヒトである程度広がって定着した株があっても、新たな株が鳥や豚から持ち込まれるとパンデミックを起こします。2010年の前回のインフルエンザパンデミックは豚インフルエンザでした。

去年・今年とインフルエンザの患者数はとても少ないのですが、インフルエンザウイルスは絶滅したわけではありません。鳥や豚の中に隠れていますので、この隠れているウイルスが「ヒトに感染する能力」を手に入れたら、ヒトに感染するインフルエンザウイルスになります。

 

オミクロン株が既存系統とは別系統で遺伝子変異の経過をたどっている、ということは、新型コロナウイルスでも同じようなことが起きうる、ということです。

動物界にプールされているコロナウイルスや、既存の系統とは別系統のウイルス株から、新たな変異株が出てくる可能性がある、ということです。

今のコロナウイルスはSARS-CoV2ですが、SARS-CoV3、SARS-CoV4がありうる、ということを意味しているのです。

これらは非連続変異ですから、毒性が弱くなっていく保証はありません。もしかしたら、毒性が強いタイプのものが出現するかもしれません。

また、「感染しやすいオミクロン株」と「重症化しやすいデルタ株」が別系統だということは、これらが融合した新型が出現するかもしれません。

オミクロン株自身は「幽霊の正体見たり枯れ尾花」のような感じで、そんなに怖くはないと思いますが、「オミクロン株が出てきうる状況がある」=「別の変異株が出てくる可能性がある」ということの方がオミクロン株の本当の怖さだと思います。

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