HOME > ブログ > テレワークにご用心
テレワークにご用心

テレワークにご用心

オミクロン株の急拡大に伴って、またまたテレワーク推進の声が上がってきました。

日本全国どこからでも通勤可能にしたとかいえば聞こえはいいですが、そんなことができる企業はごく一部の大企業であったり、現場仕事のない業種に限られます。中小企業が主体の多くの日本の企業には、そんな体力はありませんし、実際の事業の大半を占める「現場に出なくてはいけない仕事」の人たちには「飛行機で通勤して週末は北海道でゆっくり過ごす」なんてことはできる訳がありません。現実は東京の狭いマンションで家族3人肩を寄せ合いながら「家でお仕事」をするのが精いっぱいです。

ましてや昔とは異なり、今は女性の社会進出が進んでいます。朝、保育園に子供を預けて、夫婦で仕事に行くのが当たり前ですから、「どうせ家は寝るだけだし狭くても便利なところに住もう」、という住居選択をした方も多いはずです。また、東京は大都市ですから若い人も多くいますが、若い人たちはアパートやワンルームマンションに住んでいるのが一般的でしょう。

この状態で「テレワーク」っていう神経がわかりません。

ワンルームマンションで寝て、仕事をして、ご飯を食べて、部屋から出ないように自粛しろ、って・・これ、ほぼ独房生活です。

私のクリニックにも若い糖尿病の方が何人かいらっしゃいます。みなさん去年の健康診断では健康だったのです。テレワークという名の独房生活で、部屋から出ずにインスタント食品とエナジードリンクを飲んだ結果が糖尿病です。足がむくんでゼイゼイする、といっていらっしゃった方がいました。当初診断できずに悩んだのですが、最終診断は「脚気」でした。脚気?ご存じですか?ビタミンB1の欠乏症です。脚気は脚気心という心不全状態になるのですが、まさにその状態でした。原因は自粛テレワーク生活での過剰なインスタント食品とアルコールの摂取です。幸いビタミンB1の補給を行って今は元気にしていらっしゃいますが。

狭いマンションに夫婦ふたりが別々の仕事を持ち込んでテレワークをしている上に、子供も家にいるなんていう状況を当たり前にしてはいけません。

子どもが学校にいけない時、給食が食べられなくなって栄養が足りない、という話がありましたが、女性だって同じです。家事を分担する機会が多い女性の場合、会社に行っている時の昼のランチが栄養補給や息抜きの場だったのです。それがなくなって家でテレワークをしながら子供のごはんの世話をして、残り物を食べているような状態で健康な生活が保てるわけがありません。「お昼は簡単にパスタ!」では鉄の補充もビタミンの補充もできる訳がないのです。

それだけではありません。

私たちが会社で仕事をしている時には、デスクの高さや机の盤面照度が規定されています。VDTガイドラインによってコンピューターの画面の高さも決められています。これは、キーパンチャー病といわれた頸肩腕症候群の発生や、眼精疲労などの発生を予防するために必要な環境です。

ですが、家の机の高さがこのガイドラインにあっていますか?机の上の明るさはだれか調べましたか?ノートパソコンを使って丸まって仕事をしていませんか?

本来、業務環境を整えるのは企業の責任です。テレワークの名のもとに、「作業環境は家だから、従業員が勝手に環境整備をしろ」というのは、企業の就労環境整備の義務の放棄です。企業には作業環境を健康な環境に整える義務があります。この義務を従業員に押し付けてはなりません。

もちろんメンタルヘルス的な問題もありますが、それ以上に就労環境の問題は大きな問題です。この問題を放置してはいけません。

政府の諮問会議には大きな企業の偉い人だけが出ていますから、きっとこのようなことは考えていないのでしょう。

でも、テレワークを推進するのであれば、作業環境を整えることを同時に推進しなければいけません。いつかきっと大きな問題になって跳ね返ってくることになります。

 

診療予約