最近はジェネリックというのも大分浸透してきましたが、ジェネリックにもいろいろな種類があることをご存じでしょうか?
ジェネリックは「後発医薬品」と言われるものです。
製薬会社が新しい医薬品を研究開発して上市したものを新薬、または「先発医薬品」と言います。
新薬は今までのお薬よりも改良されていたり、新しい作用機序を持っていたりと良いことも多いのですが、まだお薬としての使用経験が少ないので、「製造販売後調査」や「製造販売後臨床試験」を通じて安全性や有効性のデータを収集していきます。
新薬は特許で20年間は保護されているのですが、薬の開発には15年やそれ以上の期間がかかることもあるので、それを差し引くと、発売してから数年しか特許で保護されないことも多くあります。また、製薬会社には発売後の「データ収集の義務」が課せられていますし、研究開発に膨大なお金を費やしてきたこともあるので、発売後一定の期間(8~10年間)は再審査期間として他のメーカーが同じ薬を販売できないようにして独占販売期間を設けてあります。
さて、この再審査期間が終了して、なおかつ、特許が切れている場合には、”化合物としては”だれが合成して販売しても良い訳です(もちろん薬事的承認は必要ですが)。これを「後発(ジェネリック)医薬品」と言います。しかし、合成方法や製剤の作り方の細かいところなどは、すべての情報が公開されている訳ではなく先発品の製造会社の企業秘密です。
このため、後発医薬品メーカーは各自で製剤化の研究をして、「先発品と同じようなもの」を作っている訳です。しかし、「同じようなもの」ではあっても「全く同じではない」ので、「ジェネリックに変えたら薬の効き方が変わった」というようなことが起きます。
もちろん、後発(ジェネリック)医薬品は「臨床開発やデータ収集のコストがかからないよね!」ということで、先発医薬品に比べて価格が半額程度に抑えられていますから、薬代を抑えたい我々としては、ジェネリックが使えるものなら使いたいのですが、「ジェネリックに変えたら調子が悪くなった」のでは困ります。そこで、「どれが良いジェネリックなのか」を見極めることが大切になります。
さて、再審査期間が終了してジェネリックが発売された先発品メーカーはどうなるか?というと…今まで独占的に販売していた商品の一部分がジェネリックに置き換えられるので、売上、つまり、製造する量が減ってしまいます。そこで、先発品工場で作った製品の一部をジェネリックメーカーに「ジェネリックとして売ってもらう」ということをすることがあります。このように先発メーカーの許可のもと販売しているジェネリックのことを「オーサライズドジェネリック(AG)」と言います。オーサライズドというのは英語でauthorized(認められた、承認された)ということですから、「先発メーカーによって認められたジェネリック」ということですね。
この認め方にも
1)作り方は教えないけれど、ジェネリックメーカーに「作っていいよ」と許可を与えている
2)作り方を教えてあげるから、ジェネリックメーカーにその通りに作ってもらう
3)先発メーカーが作った製品の一部をジェネリックメーカーに販売してもらう
という、いくつかの種類があります。
1)については、きちんとした作り方を先発メーカーが教えている訳ではないので、普通のジェネリックとあまり変わりありません。
2)については、作り方は教えていても機械や実際の製法などが違うので、「完全に同じとは言えません。」
3)については、先発品と同じ工場で同じように作った製品を、パッケージだけ変えて販売しているものです。「品質は先発品と全く同じ」なのに、「価格はジェネリックと同じ」なのですから、患者さんにとっては一番お得です。ジェネリックを選ぶのであれば、このタイプのAGを選ぶのが一番賢い選択です。
…とはいうものの、ただでさえ、どれが普通のジェネリックで、どれがオーサライズドジェネリックなのかわからないのに、1)~3)の作り方の違いまで分かる訳がない、というのも確かです。そもそもメーカーが、うちのAGは1)~3)のどれか、なんていうことは言わないので、内部事情を知らない人が分かる訳がない、というの事実です。
ただ一社だけ、3)の良いジェネリックであることを確実に公表している会社があります。それは、第一三共エスファ(DSEP)という会社です。
第一三共エスファ株式会社 (daiichisankyo-ep.co.jp)
この会社は自社で製品を作っておらず、先発メーカ―に作ってもらったジェネリックを販売しているので、間違いようがなく、3)の「良いAG」を販売してくれている会社なのです。こちらのHPに第一三共エスファが販売しているAGのリストが載っています。
オーソライズド・ジェネリックとは? | オーソライズド・ジェネリック | 第一三共エスファ株式会社 (daiichisankyo-ep.co.jp)
先発品じゃないと心配なんだ、という方もいらっしゃるでしょうが、この会社のAGは先発品と同じものですからご安心下さい。
もし、あなたが飲んでいるお薬がこのリストの中にあるのなら、薬局で「DSEPというメーカーのジェネリックにしてください」と言えば、それだけで、あなたのお薬は「先発品と全く同じ薬がジェネリック価格で入手できます」。
こういう情報を公表すると怒るジェネリックメーカーの方もいらっしゃいますが、ジェネリックメーカーの製造不祥事が続いている中、このような「誰がどこでどのように作ったものか?」という情報は患者さんにきちんと公開した方がいいと思いますよ。