梅雨も例年よりも早く終わり、先週は
実はもう夏休みじゃないか?
と思うくらい暑かったですね。
今週は少し温度は下がるようですが、雨やくもりが続くので湿度は高いようです。
気温が少し下がっても、湿度が高いと熱中症になりやすいことをご存じですか?
人体の熱バランスには、気温、湿度、輻射熱の3つが影響しています。
気温は外気温のことで、通常の温度計を用いて測定します。乾球温度(NDB:Natural Dry Bulb temperature)と言います。
湿度は、空気中に含まれる水分量の割合のことです。気温が高いと水分を多く含むことができますし、気温が低いと含まれる水分量は少なくなります。湿度は水で湿らせたガーゼを温度計の球部に巻いて観測する湿球温度(NWB:Natural Wet Bulb temperature)を用いて計測します。湿球温度は、温度計の表面の水分が蒸発した時の冷却熱と平衡した時の温度で、湿度が低いほど気温(乾球温度)との差が大きくなり、湿度が高いほど差が小さくなります。皮膚の汗が蒸発する時に感じる涼しさの度合いを表すものです。
輻射熱(ふくしゃねつ)は遠赤外線の熱線によって直接伝わる熱のことです。輻射熱は黒球温度(GT:Globe Temperature)、表面にほとんど反射しない黒色の塗料が塗られた薄い銅板でできた空洞の球(直径約15cm)の中心に温度計を入れて測定します。この黒球温度は、直射日光にさらされた状態での球の中の平衡温度を観測しており、弱風時に日なたにおける体感温度と良い相関があります。
この3つを組み合わせて暑さ指数(WBGT:Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)というものを計算します。計算式は、すべて摂氏を使っています。
屋外の場合:WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
屋内の場合:WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
暑さ指数に湿度の影響が70%も含まれていることに驚いた方も多いと思います。
また室内外とも温度は輻射熱を含めた温度がメインですから、特に夏では乾式温度計の温度よりも高くなることが一般的です。このため普通に外気温を壁掛け温度計などで測って
「27℃ぐらいだな~」
と思っていても、日差しが入っている部屋では思いのほか黒球温度が高くなっていることがあります。
WBGTで得られた暑さ指数で28℃以上になっている場合には注意が必要です。
「室温が28℃ぐらいだから平気だろう」と言ってエアコンを使わずにいると湿度は思いのほか高くなっていますので、簡単に上の表のオレンジ~赤のゾーンになってしまいます。
これが、「室内でエアコンを使わずにいたら熱中症になってしまった」理由です。
少なくとも除湿をかけて湿度を下げるだけでも、熱中症の危険性を下げることができます。
また、「エアコンの設定温度は28℃に」というのが有名ですが、この「28℃」には何の根拠もないことをご存じですか?
環境省などは「労働安全衛生法の基準です」という説明をすることもあるようですが、
労働安全衛生法「事務所衛生基準規則」 第5条第3項(空気調和設備等の調整)
「事業者は、空気調和設備を設けている場合は、室の気温が17度以上28度以下及び相対湿度が40%以上70%以下になるように努めなければならない。」
と書いてあるので、28℃は上限ですし、同時に湿度も70%以下にしなくてはいけません。
乾球温度を28℃で相対湿度を70%以下にするためには、湿球温度は24℃以下にしなくてはならないので、
日本の夏でエアコンを使わずに28℃以上の室内にいることは事務所衛生基準にすら合致しませんし、それどころか暑さ指数的には厳重警戒の範疇に入ります。
それどころか、エアコンを28℃設定にしておいても昼の日差しや西日の入る部屋であれば黒球温度はあっという間に30度を超えてしまいます。
電力も足りないという話もありますが、室内でもしっかりエアコンを使うようにしてください。