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新型コロナ:抗原検査とPCR

新型コロナ:抗原検査とPCR

当院では主に抗原検査で新型コロナの診断を行っていますが、

「PCRと抗原検査はどう違うの?」

というご質問をよく頂きます。

PCRというのはpolymerase chain reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の頭文字をとったものです。 酵素反応を利用して遺伝子DNAの特定領域を数百万〜数十億倍に増幅させる技術です。コロナウイルスなどはRNAウイルスですので、逆転写(RNA→DNA)を行ってDNAにしてからPCR検査をしています。

PCRでは遺伝子を増幅させて測定するのでウイルスの数が少なくても、数10~数100コピー程度のウイルスがいれば検出することできます。ウイルス量が少ない、ということは「症状が出ていない可能性が高い」ので、無症状の濃厚接触者でもウイルスを検出することができます。

ただ、PCRは2~5時間かかる検査であり、検査機器が高価であることと、RNA抽出や逆転写操作に手間がかかるので検査センターに出すことが多いので、結果が出るまでに1~2日かかることも珍しくありません。

当院ではPCRは唾液検体を使って外部の検査センターに1日1回提出していますので、結果が分かるのは検体提出日の翌日の昼~午後になります。

これに対して、抗原検査は抗原抗体反応を利用してウイルスそのものを検出しますから、検査キットは小さくて手軽です。しかも、ウイルスを増やす手間がなく、そのまま検出するので数1000コピー以上のウイルスがいれば、10~20分ですぐに結果を得ることができます。

抗原検査は「今、症状が出ている」=「ウイルスがたっぷりいる」患者さんの陽性・陰性判定をするのにはとても有用ですが、コロナウイルスに感染していてもウイルスの量が抗原検査に反応しない程度の範囲だった場合、つまり、ウイルスが数10~数1000コピーの間ぐらいだった場合には、たとえウイルスに感染していても陽性にはでません。ですから、「症状がでないくらいウイルス量が少ない場合」、例えば、濃厚接触者の判定には使えません。

当院では両方の検査を使い分けていて、通常診療で行う「今、症状が出ている人の陽性判定」には抗原検査を主に使っています。

 

最近、「帰省の前には抗原検査でコロナ陰性を確かめましょう」といった話がありますが、これはおかしな話で、

抗原検査で陽性になった ならば コロナウイルスに感染している と言っても良い

のですが、

抗原検査で陰性だった としても コロナウイルスに感染していない とは言えない

のです。

実際に「何回も抗原検査をやって陰性だった」のに「PCRをやったら陽性だった」ケースも珍しくはありませんから、帰省の際の陰性判定にはPCRを使用した方が良いでしょう。

逆に、PCRの場合には少ないウイルス量でも検出できてしまうので、回復期の陰性判定には使えません。コロナに感染して療養期間が終わった頃に陰性判定の目的でPCRをやると、もうウイルスはほとんどいないのにウイルスの残骸を見つけてしまって陽性になることがあります。こんな場合には抗原検査の陰性判定の方が信頼できます。

検査では、感度と特異度という言葉をよく使います。「感度」というのは「陽性患者を陽性と見分ける率」のことです。感度が80%であれば、100人の患者さんに検査を行ったときに、80%は陽性となるが、20%は陽性にならない(=見逃す)ということです。PCRの感度はだいたい70~90%ぐらいと言われています。

「特異度」というのは「病気ではない人を病気ではないと見分ける率」のことです。コロナウイルスのPCRの特異度は99~100%ですから、100人の病気ではない人に検査をすると0~1人を誤ってコロナだ、と言ってしまう可能性があります。

実は、検査の結果の解釈には、「いつその検査を行ったか」、「疾患である可能性がどのぐらいあるか」、「現在の感染状況がどうなっているのか」が影響するのですが、現実的には

症状がある場合の迅速検査としては抗原検査

症状がない場合の確認検査としてはPCR

と考えておけば良いかと思います。

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