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ワクチン推進派 vs ワクチン反対派の論争

ワクチン推進派 vs ワクチン反対派の論争

オミクロン対応ワクチンの開始をきっかけに、またまたワクチン推進派とワクチン反対派の論戦(というよりも罵りあい)がネット上で盛んになってきました。

SNS上などでの発言をみていると「どちらが正しい」というレベルの議論にすらなっていないのが悲しいですね。

「ウソでもデマでも相手の揚げ足をとってでもかまわないから、相手をバカにして罵って相手の主張を論破したと言って、自分の意見が正しいと主張する」

のが最近の流行のようですが、こんなのは議論でもなんでもないんです。

「ワクチンは危険です、打たないでください!」とか、

「ワクチンをうたないのは危険ですからワクチンを打ってください」と言い合っているだけで、

ただ自分の意見をプロバガンダ(宣伝)しているだけです。

「相手の視点にも正しい要素は含まれているかもしれない、という立場で相手の意見を聞く」という姿勢がないところには新しい知見がうまれるはずもありません。

「自分の意見だけが正しくて他の意見は間違っている」という立場からの意見のプロバガンダは、「自分の意見以外は全部否定する」という姿勢であって、いつもは「多様性が大切」と言っている人が他人の意見を糾弾しているのは喜劇でしかありません。

ワクチンは万能薬ではありえませんから、ワクチンを打っても感染することもあります。

ワクチンには副反応は必ずついて回ります。副反応のないワクチンはありません。その副反応の中には「死亡」という副反応も含まれます。

ワクチンの副反応の評価は、「ワクチンを打った後に〇〇が生じた」ことだけでは因果関係評価は不可能です。ワクチンを打たなくても起きた事象かもしれないからです。

ワクチン投与の副反応はワクチンのせいだけで発症するわけではありません。投与手技の問題もあります。投与を受けた人が副反応に耐えられるか耐えられないか、の問題もあります。

ですから、

「ワクチンを打ったのに感染する」ことはありますし、別に珍しいことではありません。

「ワクチンを打った後に死亡したからワクチンのせいだ」という論理は成立しません。ワクチンを打った群とワクチンを打っていない群とで背景因子をそろえて比較しなくてはいけません。

ワクチンを打った群は「基礎疾患がある人」が多くて、ワクチンを打っていない群は「元気な人」が多ければワクチン接種群に死亡数が多い偏りが出るのは当然です。

ワクチンの投与は注射で行うので、ワクチンがいかに完璧であったとしても投与手技が下手なら副反応は生じます。当院で診察した「ワクチン接種後の疼痛を訴える方」の多くは、投与部位や投与方法に問題があったと推測できる方です。また、モデルナアームも下手な接種が原因の1つである可能性があります。

でも、

抗体価が下がるから5か月ごとにワクチンを打たなければいけない、なんていうことはありません。

1回目、2回目接種終了者が全体の85%ぐらい、3回目接種終了者が65%もいれば、感染防御体制としては十分で、これ以上4回目、5回目と同じワクチンの接種を繰り返す必要はあまりありません。それよりもインフルエンザのワクチンのように、その年の流行株に合わせたものを1年に1回ぐらい追加接種すればいいくらいです。

mRNAワクチンは重症化予防は期待できますが、感染予防効果は限定的であることは最初から分かっていたことなのですが、いまさらのように「第7波はワクチンの効果が限定的だから発生した」とか言っている専門家がいて困ります。

また、日本の人口は1億2000万人いるので、感染者数が20,000~100,000人/日だと感染率0.016~0.08%レベルなので、実感とは相当かけ離れます。

例えば、既にワクチン接種した人が80%以上いるので、ワクチン接種者の感染率がワクチン非接種者に比べて1/4~1/5に減っていたとしても(ワクチンの有効率として70~80%ぐらいです)、感染者数はワクチン接種者の方が多くなります。

さらに、医療の最前線や重症患者を多く見る立場の人たちは病気の重篤性を過大評価する傾向があるため、ワクチンの安全性を過小評価する傾向があります。

これに対して、一般の人たちは重症化したケースを見ることが少ないので病気の重篤性を過小評価する傾向があり、逆に身近にみえやすいワクチンの副反応を過大評価する傾向があります。

 

また、日本と外国の医療環境は大きく違うため、「そもそもの理解が間違っている」なんていうのは珍しくもなんともありません。

例えばインフルエンザですが、日本なら

熱が出たら医者にかかってインフルエンザの検査をしてもらってタミフルなどの抗インフルエンザ薬を処方してもらう

のが一般的な行動かと思いますが、

世界中を探してこのような行動をしているのは日本人だけ! です。

世界中のタミフルの75~80%を日本だけで消費しています。

そもそも抗インフルエンザ薬は「パンデミック時にワクチンが出てくるまでのつなぎに使う備蓄用医薬品」という位置づけですから、一般に処方するような医薬品ではありません。

インフルエンザかもしれないから、といって検査キットで検査をしまくるのも日本だけです。

インフルエンザにかかっているかも、といって医者に行って検査して薬をもらうと非常に高額なので、「インフルエンザにかかる前に安いワクチンをうっておこう」というのが世界の標準なのです。

 

コロナだって同じです。コロナの薬は本来「重症化したらヤバい人」に使うべき薬であって「症状改善のために使う薬」ではありません。

重症化したら死んでしまうかもしれない人に使う薬だからこそ、少し副作用が強くても効果があれば許容できるのです。

毎日100,000人が新しくかかって、そのうちの20%(20,000人)が重症化して5%(5,000人)が死亡する

というのなら副作用の強い薬でも、効果が疑わしい薬でも使う価値はあるかもしれません。

でも、

毎日10,000人が新しくかかって、そのうちの5%(500人)が重症化して0.5%(50人)が死亡する

のなら、効果が明確で安全性が高い治療薬でなければ使ってはいけないのです。

前者の例では、1人の命を救うのに20人の治療を行う必要があります(100000/5000=20)が、

後者の例では、1人の命を救うのに200人の治療を行わなくてはならない(10000/50=200)のです。

抗ウイルス薬は手軽に誰もが飲んで予防できたり早く治したりするような薬ではないのです。

 

とはいうものの、ウソとデマと捏造と理解不足の量で比べると反ワクチン組は圧勝です。反ワクチンのSNS/ニュース/記事/本などは、以前は「理解不足や知識不足による誤解」が多かったのですが、最近はほぼ全部「捏造とウソとデマ」で固められています。「ワクチンをうたないで!」と書いてあるような情報は一切無視した方が良い状況になっています。

まあ、ワクチン推進組も理解不足は引けを取らず、都合に合わせて言うことをコロコロ変えたりするので、全面的に正しい、とも言えないので、

まあ結局両方とも大して変わらない

というのが情けない話です。やれやれ…

 

さて、「じゃあ、ちゃんとわかっている人はどこにいるの!?」という話なのですが、政府の専門会員の中にもちゃんといます。…が、あまりにワクチン推進派も反ワクチン派も低レベルすぎるので、「議論に巻き込まれると頭が痛くなるから黙っている」というのが現実です。だって、もうすでに十分なワクチン接種は達成できたし、これ以上ワクチンを4回、5回と打って行っても大して状況は変わらないと思われるので、まあ黙っていても実害はない訳です。

 

 

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