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緊急事態宣言やまん延防止措置はいつまで続ければいいの?

こんにちは!
 
今日は、
「緊急事態宣言やまん延防止措置はいつまで続ければいいの?」
という質問にお答えしますね。
 
テレビを見ていると、
「いつまで我慢すれば元に戻るのでしょうか?」
「何回緊急事態宣言を繰り返せば元に戻るのでしょうか?」
という会話が多いようです。これは
「元に戻すために今はがまんしている」
っていう発想ですけど…これは実は難しいのです。
 
そもそも感染症が終焉するには、
① 感染症が完全に封じ込めされて他への感染がなくなる
② 感染症は残るが市中の集団免疫の増加によって感染拡大が止まる
③ 感染症の病原性がなくなって消える
の3つがあります。
 
③の「感染症の病原性がなくなって消える」のは映画だけですね。
現実には病原性がなくなって消えることはないです。
①の「完全に封じ込めされる」ケースは天然痘などのケースですが、
今回のコロナでは十分に感染者数が多くなってしまっているので、
もう完全な封じ込めは不可能です。
 
現実的には②の「多くの人が免疫を持つことで感染拡大が止まる」
しか現状のコロナ感染終焉のシナリオはないのですが、
このためには一定の割合、人口の60~80%が抗体保有をすることが必要です。
 
では、日本の抗体保有率はどのぐらいか…というと、人口の1%未満です。
日本は初期の感染コントロールを非常にうまく切り抜けて、
 
諸外国に比べて感染者の数が非常に少なく経過してきました。
現在日本各地で実施されている抗体陽性率調査で、
どこの地域も極めて低い抗体陽性率となっていることは、
日本が初期の感染拡大を非常にうまく抑制したことを意味しています。
 
感染拡大が急激に発生すると、
大量の重症患者が発生して医療が崩壊してしまいます。
海外ではこのような現象が見られた地域もあります。
 
確かに日本はとても上手に感染初期のコントロールを行いました。
 
しかし、感染者の数が少ないことは、
感染によって免疫陽性になる人の割合が少ないことを意味します。
感染を終わらせるために必要な十分な抗体保有のレベルに到達していません。
 
抗体保有率を上げるためには、
① 自然感染が増える
② ワクチンで人工的に抗体保有をさせる
の2つしか方法はありません。
 
自然感染で十分な抗体保有率を確保するためには
感染者全員が十分な免疫応答を生じないことと、
感染による死亡で一定数の人口が失われるため、
人口の70~80%以上が感染しないといけいけません。
 
「3~6か月で人口の70~80%が感染する」シナリオだと
1日当たり人口の0.5~1%の感染者数が新規発生することが必要です。
 
日本の人口は1億2000万人ですからこのためには、
連日60~120万人の新規患者発生がなければ到達しえないシナリオです。
 
死亡率1~2%、重症化率8~10%という想定は
医療環境がベストエフォート下での数字であって、
これだけ大量の患者が発生する状況下では
十分な医療提供ができないため死亡率が増加することは想像に難くありません。
 
現在行われている「緊急事態宣言」とか「まん延防止措置」は、
自然感染を抑制しよう!
という方法なので、これを何回繰り返しても十分な抗体保有率は確保できません。
 
1日患者発生数2000~3000人程度では抗体保有率は全然増えませんから、
十分な集団免疫はいつまで経っても確保することはできません。
 
「ヒトの移動を抑制する」とか「ヒトと人との接触を抑制する」施策は
感染症予防の観点からは非常に有用な方法ですし、
この結果日本はとても低い感染率で人々を守ることができました。
 
しかしこの方法が社会経済に与えるネガティブ・インパクトは甚大です。
観光・飲食などの産業に多く依存していることを考えると、
 
感染抑制のための社会活動抑制を長期化させることには大きな問題があります。
では、そもそも、
「緊急事態宣言を出してまで感染抑制を行う」ことの意義は何か?
というと、
① 急激な患者発生を抑制して医療提供体制を維持する
② 医療提供体制の維持を図ることにより重症化率・死亡率の増加を抑える
ことが目的でした。
 
つまり、
感染を抑制することにより自然感染による集団免疫形成はできなくなるが、医療提供体制を守ろう
というのが施策の意味です。
 
集団免疫形成を後回しにしたことを補うために
③ 迅速な集団ワクチン接種を行う
というのが施策の前提にあったはずです。
 
このためには、ワクチン接種を人口の0.5~1%/日に実施したとしても
60~120万人/日のワクチン供給が必要です。
 
これでも十分なレベルに到達するのには100~200日かかる計算です。
 
「目先の患者数を減らすこと」に政策や世論が向いてしまうと、
患者数が増える
 → 患者数を減らすために人の移動や会食を抑制する
 → 観光や外食産業にダメージを与える
 → 十分に患者数が増え切らないうちに患者数が減り始める
 → 患者数が0にならないのに施策を緩和する
 → 患者数が増える
という、
「集団免疫も形成できず、経済活動も元に戻せず」
という悪循環に入ってしまいます。
 
早く社会経済活動を元に戻すためにも、
なるべく多くの人にワクチンを迅速に接種する
事が必要なのです。
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