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ワクチンを接種しても無敵モードにはなりません

こんにちは。

昨日の続きですが、今日のお題は、

「ワクチン接種しても無敵モードにはなりません。」

呼吸器系ウイルス感染症のワクチンで完全に感染を抑制できるものはありません。

ワクチンで抗体形成を誘導したとしても作られる抗体の種類は主にIgGです。

IgGは主に血中に存在する抗体ですので、血中に入ったウイルスを中和することができます。

しかし、喉や鼻などの粘膜面に分泌される抗体はIgAといいます。

IgGはその構造上の特性から、粘膜面に分泌されることはありませんし、注射するタイプのワクチンで分泌型抗体であるIgAが作られることはありません。

呼吸器系ウイルスは主に飛沫感染して、咽頭や鼻腔の粘膜面にウイルスが付着して粘膜面の細胞にウイルスが侵入して増殖します。ただ、このような粘膜面は血流が少ないのでIgGタイプの抗体はあまり役に立たず、IgAタイプの抗体が防御の主役です。しかし、先ほども言ったように注射するタイプのワクチンではIgA抗体は作られないので、一般に感染は成立してしまうことが多く、咽頭や鼻腔でウイルスは一定程度増殖します。

このように増殖したウイルスは咳や会話などで飛沫として飛び散って、新たな感染を引き起こします。ただ、細胞性免疫で誘導された免疫細胞がウイルスが感染した細胞を排除してくれるので、ウイルスの増殖自体は減ります。つまり、注射するタイプのワクチンでは、完全に感染を抑止することはできませんが、感染能力自体を低下させることはできます。

もし、ウイルスが鼻咽腔で増殖して肺に落ちていくと、抗体を持っていなければ肺で増殖して肺炎になってしまいますが、肺は血流が非常に豊富な臓器なのでのIgGの供給も多く受けることができます。ですから、ウイルスが肺に落ちて行ってもIgG抗体で中和されてしまうので、肺炎などを引き起こすことはできなくなります。つまり、重症化はしなくなるわけです。

実際に、高齢者のワクチン接種が進んで80~90%の接種率になった結果、高齢者の重症者は激減しました。これは、ワクチンが重症化抑制に非常に有効であることの証拠です。

つまり、ワクチンは「重症化しないように守ることはできるけれども、感染能力を低下させることはできても、完全に感染しないようにすることはできない」のです。

ワクチンを打っても無敵モードになるわけではありません。

アメリカなどが「ワクチンを打った人はマスクをしなくてもいい」と言っていましたが、最近になって「ワクチンを打った人でもマスクをし続けるべきだ」と方針を変更したのも、これが理由です。ワクチンを打っていても「感染しなくなる」訳でも、「感染させなくなる」訳でもないのです。

では、なぜワクチンを打たなくてはいけないのか?というと、一つは重症化予防です。ワクチンを打っておけば重症化しないのであれば、怖い病気ではなくなります。

もう一つは、パンデミックを終わらせるためです。感染しなくなる訳でも、感染させなくなる訳でもないのですが、1人の感染者からうつる新たな感染者の数が減って、1以下になればよいからです。感染症を終焉させるためには、完全に感染症にかからなくなるようにする必要はありません。再生産数というのですが、「1人の感染者から何人の新しい感染者がつくられるのか」が1を切れば、感染症のパンデミックは終焉します。このための武器がワクチンなのです。

ですから、ワクチンをなるべく早く打ってください。

ワクチンを打てない子供たちがいますから、ウイルスが変異して子供たちにも感染するようになってしまう前に、なるべく早くパンデミックを終焉させなくてはいけません。

そのためにも大人たちがワクチンをなるべく早く打つことが必要なのです。

 

 

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