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吉村知事への手紙

吉村知事への手紙

ご無沙汰しております。以前何回か直接お会いしてお話させて頂いたことがあるのですが、たぶん覚えてはいらしゃらないでしょう。

ぜひここ数日の私のブログを読んでいただきたいと思います。

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医薬品は小さな資金で開発を始めて、開発に成功すれば大きな利益を得ることができますから、株価の上下変動の非常に大きな業種です。小さなベンチャーであれば規模が小さいので容易に大きな変動が発生します。

知事が「開発に成功するだろう」と言えば、大きな資金が動きます。市場も反応します。

例え知事が直接には株を売買しなかったとしても、株価の乱高下に巻き込まれる人たちが出てきます。

また、会社が不当な利益を得ることの手助けをしていることにもなります。

「風説の流布」に該当しないように細心の注意を払うべきです。会社が「成功できる」と言っているとしても、その当事者だけの意見だけではなく、「無理だ、成功しない」という意見もよく聞いて中立的な判断をするべきです。

また、医薬品を承認するかしないかの方法論は、「失敗と修正の歴史」です。

革新的な作用機序や、ヒトに使う前の非臨床で素晴らしい成績を出していた化合物であっても、ヒトに使ったら「何の効果もなかった」なんていうことは珍しくもありません。ですから、医薬品の性能評価には厳密な手順とルールが決められています。

また、医薬品は使い方を誤れば「薬害」と言われる問題を起こすことは「薬害オンブズマン」発祥の地大阪の知事であればよくご存じのはずです。

政治家や有名人が「この医薬品は効果が期待できる」と言えば、世間も大きく期待します。世間や政治家の大きな期待を背負った医薬品候補の評価をすることは容易ではありません。判断にはグレーな部分が必ずついて回ります。そういう時に「世間が期待しているならそれに応えよう」というバイアスが入る可能性が必ずあります。医薬品の評価は国民の安全を守るための作業ですから、なるべくバイアスがかからない状態で評価できるようにしてあげなくてはいけません。

医薬品は地方の特産物や観光地の宣伝と同じように扱ってはいけないのです。

確かに知事がおっしゃるように「チャレンジしなくては成功もない」のは事実ですが、でもそれは市場の仕事であって、知事や行政の仕事ではありません。

イソジンが効くか効かないかの評価は、医学や医薬品評価の専門家が行うことです。知事が「イソジンが効く」ということは、知事が「イソジンの宣伝塔になっている」だけのことで、第三者から見れば特定の業者に利益誘導を行っているだけのことです。

前回知事が「イソジンが効く」という会見を行った翌日には、日本中の薬局からイソジンが消えました。イソジンを使わなくてはいけない患者さんの分まで使えなくなったのです。

おそらく悪気なくやられていることだとは思いますが、知事の発言が医療の現場や医薬品評価の現場では「大迷惑」以外の何物でもない、どころか、場合によっては害悪になっていることはよくご自覚いただく方がよろしいかと思います。

医薬品はしっかりした効果と、確実な安全性が確認されていることが必須条件です。新しい技術、面白い方法だという理由だけで飛びつき期待することは正しい姿勢ではありません。行政がやらなくてはいけないことは、国民の安全を守ることです。

今一度ご一考いただければ幸いです。

 

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